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父の俳句 [文学]

コロナ禍の家籠りで、部屋の片づけをしたことは先日書いた。
その折に久しぶりに手にした本のひとつが父の句集。
父は昨年二月に亡くなったが、七十代から八十代にかけての
十年ほど、熱心に句作に励んでいた。他にも焼き物をしたり、
詩吟など、趣味が多く、俳句はほんの「息抜き」程度に
やっていたように見えたのだが。

ある日、父から電話があって
「これからちょっと、玄関先に寄る」と言われたときは、
何事だろう、と思った。母は用事の有無にかかわらず
ちょくちょく私のところへやってきていたが、
父はよほどの様がない限り、顔を見せない人だったから。

父は真新しい、青いシャツを着て、いつもより
しゃん、としている様子だった。そしておもむろに
茶封筒入りの小冊子を差し出した。
「これ、こんど出したから」

緑色の表紙の、A5判、一センチほどの厚さで、
「合同句集 のびる」と題されていた。
「ええ、凄い、句集出したんだね!」
と言うと、いつものようにちょっと照れたように笑い、
「じゃあ」
と片手をあげるとそそくさと帰っていった。(この項、続けます)
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