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折々の作家・米原万里 [文学]

この作家の作品を読んでいたのは、実は十年近く前。
痛快な文章を書く人だなあ、と何冊か貪るように読んで・・。
もう少し続けて読みたい、と思いながら、そのまま
ずっと今日に至っていた、という感じ。
今回、初めて手にとったのが『オリガ・モリソヴナの反語法』。
この本を読みたいと思ったきっかけは、ちょっと可笑しい。
このところのコロナウイルス騒ぎで、どこにも行けず。
歌会やらちょっとしたイベントが次々に中止になり。
家で、絵を描くくらいしかすることがなくなったのだが。

人間の体を描くことに最近凝り出し、バレリーナなら
裸ではないが体の線がかなり見えるから、バレエの本に載っている
写真を参考にしよう。とバレエの本をめくるうちに・・・。
(ちなみに私の最初の翻訳書は『はだしのバレリーナ』で、
バレエ関係の本はかなり持っているのです)
この『オリガ・・』について紹介している下りに出会い、
あ、そうだ、この本、読もうと思っていた時期があった。
とばかり、飛びついたのでした(ここまでが長いよね)。

読みだしたらもう夢中。コロナウイルスもイラスト描きも、もう頭から
すっ飛んでしまった。凄いなあ、こんな文章が書けるなんて。
いや、設定が凄い。だって、あの暗黒のスターリン体制下の
ソ連。そこでどんなことが行われていたのか。日本人は
薄々は知っているが、こんなに強烈なリアリズムをもって
迫ってくる文章に出会った事はなかった。
1950年代末から六十年代にかけて、プラハのソビエト学校で
学んでいたという経験が何といっても大きいのだろう。
主人公の志摩という女性が、そのまま米原氏、のようにも
読めてしまい。う~ん、だいぶ感情移入してしまいました。

藻刈富代には、笑える。かのバレリーナにそっくりの名前。
もしかして、本当なのかな。だいぶ皮肉っているけれど。
というわけで、バレエを愛する人、ソ連に興味がある人、
その他大勢の皆様にお勧めいたします。
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